台湾で7月10日と11日に開かれた「第1回世界ろう者ユース卓球選手権」で、広島県立広島南特別支援学校高等部1年の大本涼太さん(16)と竹山琉介さん(15)が男子ダブルスで銅メダルを獲得しました。
大本さんは混合ダブルスでも3位、シングルスでもベスト8入り。幼稚部から一緒で、切磋琢磨してきた幼なじみの2人が、初めての国際大会で実力を発揮しました。
同選手権は12歳〜19歳が参加。竹山さんは昨年の選考会で日本代表入りし、大本さんは今年2月の「第45回全国ろうあ者卓球選手権大会」で優勝し出場資格を得ました。
不安と楽しみが入り混じる気持ちで同選手権を迎えたという2人。メダル獲得という結果を残したものの世界の強さを目の当たりにし、新たな目標と課題が生まれたそうです。
大本さんは「外国人選手は人生を賭けて卓球をしていると感じた。世界で勝つことの難しさも体感したので、一つひとつの技術をより磨いていきたい」。竹山さんは「外国人選手は挑む気持ちが強くて、圧倒された。まずは気持ちを強く持てるように練習していきたい」と、さらなるレベルアップを誓います。
ともに生まれつき聴覚障がいがあり、卓球を始めたのは大本さんが小学5年、竹山さんが中学1年のとき。以来、学校の朝と放課後の部活で技を磨き続け、大本さんは回転のあるフォアドライブ、竹山さんは追い込みを仕掛ける粘り強さを身に付けてきました。
プレー中、日常生活で着けている補聴器を外します。一般的な卓球は、ラケットに当たる球の音の違いで強弱など判断するそうですが、聴覚障がい者に打球音は聞こえません。球が高速で行き交う展開の中、対戦相手のラケットの角度や球の回転などを瞬時に見極めながら打ち返します。
聴覚以外の感覚を研ぎ澄ませプレーしていると、竹山さんは「相手が敵でも、心がつながっていると感じる」と話します。同選手権でも、初めて会った外国人選手と試合直後から「上手だね」「いつから卓球を始めた?」など、国際手話や身振りでの交流が始まったそう。世界の選手とコミュニケーションを取るために、国際手話を覚えることも2人の目標になりました。
部活のあと、広島市西区の卓球教室・ヒロタクスポーツに移動し、さらに汗を流す大本さんと竹山さん。ほぼ毎日練習しているそうです。同教室で指導する飯村敏文さんは「2人とも能力が高い。今後も世界大会で勝つ実力がある」と期待を寄せます。
間近の目標は、8月13日と14日にある選考会で、来年1月ブラジルで開催される「第1回世界ろう者ユース競技大会」への出場権を獲得すること。
大本さんは「日本代表に選ばれて金メダルを取る」、竹山さんは「世界に広島の卓球選手は強いんだと示したい」。親友でありライバルの2人が地元・広島と日本を背負い、世界の頂点に立つ闘志を燃やしています。
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