「スペシャルオリンピックス2022広島」が、2022年11月4日(金)〜6日(日)に開かれます。スペシャルオリンピックス(SO)が広島で催されるのは初めて。国内の知的障害のあるアスリートが、2023年に開催される世界大会出場を目指し熱戦を繰り広げます。
スペシャルオリンピックス(SO)とは・・・
スペシャルオリンピックスとは、知的障害のある人たちにスポーツをする機会とその成果を発表する競技会を、年間通じて提供する国際的なスポーツ組織。スポーツを通じ、知的障害の人たちの社会参加を応援するため1968年に故ケネディ大統領の妹ユニス・シュライバーが設立しました。日本は、1994年に国際本部から認証を受け、国内の本部組織「スペシャルオリンピックス日本(SON)」が立ち上がりました。
西広島タイムスでは、スペシャルオリンピックス2022広島に携わる大会関係者、アスリート、コーチ、ボランティアなどを取材し、SOや大会に向けたそれぞれの思いを連載で紹介します。
スペシャルインタビュー 第1回
2022年第8回スペシャルオリンピックス日本 夏季ナショナルゲーム・広島
大会実行委員会 事務局長
岡田幹子さん
2023年、ドイツ・ベルリンで開かれる「スペシャルオリンピックス夏季世界大会」。2022年11月に行われる「スペシャルオリンピックス2022広島」は、その世界大会へ向けた国内選考を兼ねています。
大会実行委員会事務局長を務める岡田幹子さんは、SON広島立ち上げ当初の1998年から携わっています。
可能性が開花する瞬間に立ち会う感動
ースペシャルオリンピックスの意義は?
岡田さん 知的障害のアスリートの日ごろの練習を提供すること、大会を開催することの2つの使命があります。知的障害者も健常者と同じで、練習の成果を発揮する大会がないと続きません。SOは、知的障害のアスリートが出場する県大会、地方大会、全国大会を年間通じて企画、実施しています。
ー岡田さんは水泳教室で知的障害者を指導されています。どのような感じでしょうか?
岡田さん 知的障害、発達障害のある人たちは、1回で2つのことを同時にできません。水泳では最初にバタ足を教え、バタ足ができたらドルフィンキックに移りますが、いざドルフィンキックをやるとバタ足ができなくなる。記憶が上書き保存されてしまうのです。一年とか何十年もの時間をかけてほんのちょっと進歩するといった具合です。
ーとても根気が入りそうですね。
岡田さん これがある日突然できるときがくるんです。その瞬間はもう言葉にならないくらいの感動で、アスリートの可能性が開花するのを目の当たりにして幸せな気持ちになるんです。諦めなくて良かったと、コーチの役目をいただいたことに感謝しています。
重度心身障害の我が子を通して
ー岡田さんがSOに関わりを持ったきっかけは?
岡田さん 息子が分娩時の酸欠脳症で重度心身障害になりました。NICU(新生児特定集中治療室)に入り、私もずっと病院にいる生活。そんなとき広島パイロットクラブ(※)さんと知り合い、お世話になっていました。息子が小学校卒業前に、12歳で突然亡くなってしまって。しばらく何の気力も出なかったのですが、ある日たまたま重度障害者を守る会に顔を出したらパイロットクラブの女性たちがいて。「広島でSOを立ち上げるから、あなたやって」とお願いされました。それがきっかけです。
ー突然、大仕事を任されたのですね。
岡田さん 私が、守る会の扉を開けた瞬間「来た!」「この人よ」と、皆さんの振り返ったときの顔が今でも脳裏に焼き付いています。それからはSO広島の設立式典のプログラムを作ったり式典の企画内容を考えたり。当時はSOのことを全く知らなかったのでバタバタでしたね。NICUに通っていたころ、同じ病児のお母さんたちがいろいろな情報を得られるよう「マザーグースの会」を立ち上げて、月1回通信を発行していたんです。その経験が式典のプログラム作りに役立ちました。
※・・・広島パイロットクラブ
国際民間ボランティア団体。世界各地で会員がクラブごとに「脳関連障害」、とりわけ“外傷性脳障害”に活動の焦点を当て、それぞれの地域に密着した地道な活動を続けています。
ーそれからずっとSO広島に関わっていらっしゃるんですね。
岡田さん 息子を産んでいなかったら、パイロットクラブさんとつながってSOに関わることはなかったと思います。息子も十二年間、いろいろな方の支援をいただいて一生懸命生きました。本当に人生はご縁ですね。
スポーツをしたい知的障害者がSOにつながるように
ー最後に、読者へメッセージをお願いします。
岡田さん 知的障害のアスリートがスポーツを楽しんでいる大会があって、SOが日ごろのスポーツも支援している団体だと多くの人に知ってほしいですね。知的障害の人はスポーツができるところを自分で見つけるのは難しい。もしあなたの周りにスポーツをしたい知的障害の人がいたら、SOを教えていただければ。広島県内の知的障害の人がスポーツをしたいと思ったときに、ちゃんとSOに来ることができるシステムを作っていきたいです。