半世紀以上けん玉を製作してきた師の技術を受け継ぎ守る唯一の職人
廿日市市の木材利用センターで、けん玉作りに携わる。けん玉職人の師が高齢のため昨年引退し、今は鍋谷さんが1人で製作にあたる。「けん玉発祥の地」とされる同市で長年けん玉を作り続けた師の技術を絶やすまいと、真剣な眼差しで木工機械に向かう。
自営業で木を丸くする技術を身に付けていたこともあり、「手伝ってほしい」と声を掛けられた。九年前から自分の木工所を営む傍ら、同センターに週2日通うようになった。ここで作ったけん玉は、同市の土産物店で販売したり、同市の小学校に入学した児童へプレゼントしたりして多くの人に親しまれている。
現在はコロナ禍で中止しているが、定期的にけん玉作りの教室を開く。子どもたちが、鍋谷さんの作ったパーツでけん玉を組み立て、好きなデザインにペイントする。「世界に一つのけん玉ができてすごく喜んでくれる。やってきて良かったと思える瞬間です」と目尻を下げた。
同センターには、およそ半世紀前から師が使っていた古い機械が稼働する。「師の技術を伝承していきたい」。後継者が現れるそのときまで、できる限り作り続けていく。
鍋谷 一也(60)
廿日市市在住。しみず木工所代表。廿日市市木材利用センターで、年間約2000体のけん玉を製作する。
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