vol.4 診断
脳外科病院の診察室。
目の前には、娘の脳のCT画像が並んでいる。そこには、ほとんど水玉模様といっていい程のたくさんの白っぽい丸い部分が映っていた。
「視神経に影響していそうな脳幹周辺に異常は見られないよ」
脳外科医である兄は画像を見ながら言った。
白い部分の数などから、いわゆる脳腫瘍ではないだろうとのこと。私が心配した余命宣告を受けるような脳幹部分の脳腫瘍は見られないということだった。ただ、白っぽい水玉模様が病変であることは間違いない。
(つまり、一発余命宣告もあり得る脳幹の脳腫瘍はないということ?本当に!?
じゃあ、このたくさんの白いところは何…?)
ちょっと分からないから調べてみてくれる、という事で、この日は病院を後にした。
病院から自宅までは、30分ほど。
私がちょうど自宅近くのスーパーの駐車場に着いたとき、兄から電話があった。
娘は後部座席でぐっすり…。
普通ならありえないと思うけれど、私は近所のスーパー「フレスタ」の駐車場で、電話で病名を聞くことになる。
「結節性硬化症っていう病気だと思う」
それは、もちろん初めて聞く病名だった。
脳の病変から、「結節性硬化症」の可能性が高いけれど、詳しい事を調べるために色々と検査を受ける必要があるということだった。
「診断基準の一つに、”木の葉状の白斑”があるんだけど、白斑があったりする?」
兄に聞かれて私はドキッとした。
娘の脇腹あたりには、まさに木の葉の形の5cm四方ほどの白斑があり、他にも小さな白斑は全身にあわせて10個ほどあった。検診などで相談しても、白斑は特に悪いものではないから問題はないし原因は分からないと言われていた。
白斑のことを伝えると、脳の病変と白斑で「結節性硬化症」の診断で間違いないだろうとのことだった。
教えてもらったのは、結節性硬化症とは、
- 一万人に一人くらいの、遺伝子異常による難病指定の病気で、病気自体が治ることはないということ。
- 脳のCTに映った白い部分が結節(ごく良性の腫瘍のようなもの)で、娘の体の変な動きはてんかん発作だということ。
- 結節が、心臓や腎臓、皮膚、眼底、爪など様々な場所にできる可能性があること。
- 今後、発達の遅れや、知的障害、自閉傾向がでてくる可能性があること。
- 診断されても一生症状がでない人もいるほど個人差がある病気だということ。
そして、寿命を全うできる病気であること。
(難病…治らない…?てんかん?発達?知的障害?自閉症…娘が?こんなにニコニコ元気なのに?)
私の頭の中には「?」がいっぱいで。
フレスタに車を停めたまま、携帯で「結節性硬化症」について延々検索していた。
頭は真っ白だったけれど、それでも、余命宣告を心配してきた私には、「寿命を全うできる」という言葉は本当に救いだった。
※このコラムは、西広島タイムス紙面に2019年から連載した内容を加筆・修正して掲載しています。
【 コラム作者 】
広島市在住の3児の母。
末娘が2歳のとき「結節性硬化症」という難病と診断される。
子どもの病気や障害と向き合いながら、子育てや仕事に毎日奮闘中。