【質問】
私は、個人で雑貨店を開業しました。知人から記帳や帳簿の保存が必要と聞きましたが、初めてでよく分からないため教えてください。
【回答】
帳簿の記帳や保存は、個人で事業や不動産貸付け等を行う全ての方(所得税及び復興特別所得税の申告の必要がない方も含みます。)が対象となっています。
あなたのように個人で雑貨店を開業した場合、一年間(1月1日から12月31日)の収入や仕入れなど必要経費を集計したものを、事業所得として確定申告することになります。
一年間に生じた収入、経費などを正しく計算して申告するためには、日々の取引の状況を帳簿に記帳し、事業に関する書類を一定期間保存する必要があります。
帳簿に記帳する内容は、収入金額や必要経費に関する事項について、取引の年月日、相手方の名称、金額や日々の売上げ・仕入れの合計金額などです。
記帳にあたっては、一つ一つの取引ごとではなく日々の合計金額をまとめて記載するなど、簡易な方法で記載してもよいことになっています。
なお、事業所得の申告方法は、「青色申告(※)」と「白色申告」があり、作成すべき帳簿や書類の種類、作成した帳簿や書類の保存期間に違いがあります。
※「青色申告」は、日々の取引を所定の帳簿に記帳し、その帳簿に基づいて正しい申告をすることで、税金面でさまざまな特典を受けることができる制度です。
青色申告を行う場合には、その年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要があります。ただし、その年の1月16日以後に新たに開業した方は、開業の日から2か月以内に提出してください。
収入金額や必要経費を記載した帳簿のほか、取引に伴って作成した帳簿や棚卸表、請求書、領収書などの書類は次表のとおり保存する必要があります。
【青色申告の場合】
保存が必要なもの | 保存期間 | ||
帳簿 | 仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳など | 7年 | |
書類(※) | 決算関係書類 | 損益計算書、貸借対照表、棚卸表 | 7年 |
現金預金取引等 関係書類 |
領収証、小切手控、預金通帳、借用証など | 7年(※) | |
その他の書類 | 取引に関して作成し、又は受領した上記以外の書類 (請求書、見積書、契約書、納品書、送り状など) |
5年 |
※前々年分の事業所得及び不動産所得の金額が300万円以下の方は5年
なお、青色申告の方は、基本的に正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳を行わなければなりませんが、簡易な帳簿(①現金出納帳、②売掛帳、③買掛帳、④経費帳、⑤固定資産台帳)で記帳してもよいことになっています。
また、青色申告には、数多くの特典がありますが、主なものは次のとおりです。
◎青色申告特別控除
事業所得や不動産所得を生ずべき事業を営んでいる青色申告をされている方で、正規の簿記の原則(一般的には複式簿記をいいます)により記帳している方については、一定の要件の下で事業所得等の金額から最高55万円(e-Taxによる申告(電子申告)又は電子帳簿保存を行っている方は、最高65万円)を差し引くことができます。
また、簡易な帳簿による記帳であっても、最高10万円の青色申告特別控除の適用を受けることができます。
◎青色事業専従者給与の必要経費算入
事業主と生計を一にしている配偶者や15歳以上の親族で、その事業に専ら従事している人に支払う給与については、届出書に記載した範囲内で支給した給与の額のうち、仕事の内容や従事の程度等に照らして相当な金額として認められるものを必要経費に算入することができます。
※この特典を受けるためには、「青色事業専従者給与に関する届出書」を所轄税務署長に提出する必要があります。
◎純損失の繰越しと繰戻し
青色申告をされている方は、事業から生じた純損失の金額を、翌年以後3年間にわたって、順次各年分の所得金額から差し引くことができます(純損失の繰越し)。
また、前年も青色申告をされている場合は、純損失の繰越しに代えて、その損失額を前年分の所得に繰り戻して控除し、前年分の所得税の還付を受けることもできます(純損失の繰戻し)。
【白色申告の場合】
保存が必要なもの | 保存期間 | |
帳簿 | 収入金額や必要経費を記載した帳簿(法定帳簿) | 7年 |
業務に関して作成した上記以外の帳簿(任意帳簿) | 5年 | |
書類(※) | 決算に関して作成した棚卸表その他の書類 | 5年 |
業務に関して作成し、又は受領した請求書、納品書、送り状、領収書などの書類(※) |
※令和4年以降、前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が300万円以上の方は、その業務に係る現金預金取引関係書類を5年間保存する必要があります。
さらに、納税者の方の事務負担やコスト負担の軽減などを図るため、一定の帳簿書類については、コンピュータ作成の帳簿書類を紙に出力することなく、ハードディスクなどに記録した電子データのままで保存できる電子帳簿等保存という制度があります。
電子帳簿保存とは、原則、紙での保存が義務付けられている帳簿書類について、一定の要件を満たした上で電磁的記録(電子データ)による保存などが可能となる制度です。
電磁的記録による保存は、大きく次の3種類に区分されています。
①電子帳簿等保存(電子的に作成した帳簿・書類をデータのまま保存)
②スキャナ保存(紙で受領・作成した書類を画像データで依存)
③電子取引(電子的に授受した取引情報をデータで保存)
電子帳簿保存法は、令和3年度の税制改正(令和4年1月1日施行)において、税務署長の事前承認制度が廃止されるなど、抜本的な見直しがされています。
詳しくは、国税庁ホームページをご覧いただくか、廿日市税務署 0829-32-1217へお尋ねください(自動音声案内後「1」を選んでいただくと、一般的な相談にお答えする「広島国税局電話相談センター」につながりますので、そちらも是非ご利用ください。)。
廿日市税務署 寄稿