vol.31 4歳のお誕生日
◇2017年 11月
てんかんの発作を緩和するための手術が無事に終わり、術後の経過良好、保育園にも復帰してすっかり日常を取り戻したころ、娘は4歳のお誕生日を迎えた。
大きな苺のショートケーキに立てた4本のローソクを、娘は1年前と同じようにふぅ~ふぅ~ふぅ~ふぅ~と吹いて上手に消した。私は、手術が無事に終わってまた家族みんなで誕生日をお祝いできることを特別に感じていた。
ただ、1年経っても、娘は1年前と同じように一生懸命ローソクを吹き消すのがやっとだったし、発する言葉の数は相変わらず必要最低限の単語のみ、1年の間に目に見えて成長がある訳ではなかった。むしろ、知的な面での発達がなかなか進まない娘は、どうしても同い年の子とは差が開いていった。
同じころ、保育園の発表会があった。
みんなが練習した劇やお歌を一生懸命に披露する中、娘も加配の先生(福祉サービスの一つで、障害のある子が健常児と一緒にすごせるようサポートしてくださる)に連れられて、みんなと一緒に登場したり引っ込んだりしていた。
動物のお面を付けた小さな娘はかわいかったけれど、もちろん台詞が言えるわけもなく、合唱の時もただ自分の立つべき場所にまっすぐ前を見て立ち尽くしていた。
みんなみたいにはできないけれど、登場してすぐ私を見つけたのに駆け寄って来ず、自分がそこにいるべき状況を理解して自分の場所にいられたのが、娘の小さな成長だった。
誕生日にお祝いしてもらって嬉しそうに歌に合わせて手を叩きながら体を揺らしてるのを見ていると、無事にお祝いできて良かったとしみじみ思った。来年もまた、娘が元気に嬉しそうに誕生日を過ごして、できればちょっとでも小さな成長が増えているように、願うばかりだった。
次の誕生日を病院で迎えることになるなんて、この時は知る由もなかった…。
※このコラムは、西広島タイムス紙面に2019年から連載した内容を加筆・修正して掲載しています。
【 コラム作者 】
広島市在住の3児の母。
末娘が2歳のとき「結節性硬化症」という難病と診断される。
子どもの病気や障害と向き合いながら、子育てや仕事に毎日奮闘中。