行事で子どもは育つ
「校長先生、私の作品を見てください。」
文化祭の作品展でのことです。カッターナイフを使った紙工作で家を作った子どもが声をかけてきました。自分の作りたい思いや叶えたい願いがあって、それが形になっているのが作品ですから、人に伝えたくなります。たまたまそばにいたわたしに作品の説明をしてくれました。作品展では多くの人に見てもらえるので、目的意識が高く、普段より一層力が入ります。ですから、「カッターナイフを適切に使う」という技能はより身につきます。どんな家にしようかと構想力も高まります。身近な材料を集めて材料からの発想力もつきます。うまくいかないので、ある部分をこう変えようと修正する力もつきます。紙工作で、家の壁の面にひねりが入っておもしろい形になっていたので聞けば、下の細いところがあったからぐらぐらしてしまい、それをひねって隣の壁にくっつけたらうまくいったと言います。どうやってこの壁を作ったのかという質問に、ていねいに的確に答えました。人に伝えたくなれば、話す力もつきます。硬筆や毛筆のコンクール作品も同じことです。入選を目指して、見てもらえることを目標に練習し、練習すれば字がきれいになることがうれしくて、もっと良くしようと頑張ります。朝出会ったときにコンクールに入選するために何をどうしているのか説明する子もいます。国語のスピーチコンクールも英語スピーチのコンテストも運動会の競技もそうです。大きな舞台があれば、日常の学習が勢いづいて子どもは育ちます。
行事をするには汗を流す人が必要です。文化祭は5年生と6年生が展示用のパネルを運んで組み立てます。先生から指示されたことですが、楽しいと言いながらやっています。どう見ても楽しい作業ではありませんが、自分たちで文化祭の準備をしていると受け止めているので楽しいのです。主体的に汗を流し、その心地よさを味わうことは、これから先の中学校や高校で教師の手を離れて自分たちで作り上げる文化祭や体育祭につながり、その主体的な活動は社会に出てもチームで一つの仕事をやり遂げるときに生きてきます。
教え子が親になり、学校に来てボランティアで茶道教室を手伝ってくれています。昔から、行事の準備や片付けを笑顔でやる子どもでした。人がやろうとしないことを進んでやる子どもでした。掃除でも誰もしないなら私がしますと行動していました。今も気持ち良く裏方に徹してやってくれています。そんな姿を子どもたちは見ています。有り難いなと心で感じた子どもはお礼を言っています。子どもは汗を流す人を見て、一つのことが成し遂げられることを知って育ちます。
文化祭でも運動会でも目的意識を持って活動することで、能力を伸ばします。5、6年生は行事を作り上げる喜びを働く力として蓄えます。5、6年生や親御さんの働く姿を見た子どもたちは、目的に向かって汗を流す人になれます。