石内に現れる白い船の正体とは…
田園風景の広がる広島市佐伯区石内地区。石内バイパスから一歩入った旧道を車で走っていると、突如、船が現れます。白の船体に赤い船底で長さ約10mはあろうかという船。民家に隣接し、船首には「SYUUBOO MARU」「田舎蔵 楽」と書かれ、サッシの付いた窓が見えます。海からはるか遠く離れたこの場所に一体なぜ大きな船が…。
実は、この船、以前は会席・仕出し・宴会の「田舎蔵 楽」の宴会場でした。代表の楽本義勝さんが「お店の看板になるし、宣伝にもなるのでは」と友人から譲り受けた代物。
船は、元々、広島県南中部の忠海で使っていたミカン船だったそうです。ミカン船として引退し、大工が船内を改造しバーや厨房を備え付けました。
しばらく使った後、友人がいらなくなったことから、08(同20)年に楽本さんが引き取ったそうです。スクリューとエンジンも備え、重さ約8tある船はクレーンやトレーラーを使い運搬。店の前が通学路だったこともあり、子どもたちの登校・下校時間を避けるなど運ぶ際には気を使ったようです。
突然、現れた船は近所でも話題に。宴会で、人数が多く隣接する平屋建てにある座敷に入らないときには船を活用したり。時には誕生日会や忘年会をするなど活躍。「看板になり、目印にもなり、船のある店として宣伝にもなった」と効果は抜群だったよう。
店は三年前にやめ、現在、船は楽本さんの趣味でもある骨董品など収蔵し「今は倉庫。他の人から見たらごみかもしれないが、私にとって大切なもの」。思い入れのある収集品とともに、宴で盛り上がった思い出の詰まった「宝船」となっています。