「対話力」
幼稚園の先生から話を伺う機会がありました。自分の思いを伝えられないことや順序立てて話せないことから、話す力をつける取り組みをされているそうです。「Aがいい。」と話すのではなく、「AとBを比べたら、Aのほうがおもしろそうなので、Aを選びました。」順序よく話せるように練習をされています。「A先生からハサミを借りてきてください。」と用事を頼んで、A先生に依頼内容を伝えさせ、「A先生からハサミを借りてきました。」と報告させるのだそうです。こうやって話す機会を作ることで力をつけておられます。そこには訓練ではなく、「なるほど、Aがいいのか。あなたはAが好きなのですね。」という傾聴や共感が、「ハサミを借りてくれて助かる。」という感謝があり、心が通う関係が見て取れます。
マザリングということばがあるそうです。人は話を聞くときに自然とうなずくものですが、赤ちゃんのときに母親とのコミュニケーションによって培われる能力が身についていないとうなずけない人になってしまうそうです。マザリングとは母子で交わす会話のことで、赤ちゃんが、「ぶぅ。」と言えば、母親が、「ぶぅねえ。」と返し、ことばを受け止めます。このマザリングが十分に行われず、良いタイミングでうなずけずに育つと、大人になっても対話が成立しないことがあります。会社で上司からの説明にうまくうなずけず、話を聞いているの?と不信感を持たれてしまうのだそうです。仲間との話にも関われず、愛想の悪い人と思われてしまいます。会社を経営されている方に採用面接で見るポイントを聞いたとき、共通するのがコミュニケーション能力です。自分のアイデアを伝えることや相手を受け入れることができなければ仕事にならないと聞きました。
学校教育では、「ていねいに聞く」ことを指導しています。子どもたちには、話す相手に体を向けて聞くことを習慣づけています。教師の話を聞くとき、仲間の発表を聞くときも体を向けて聞きます。2人で話し合うときも体を向け、互いの考えを聞き合います。聞き合い、より良い考えを見つけていきます。「ていねいに話す」ことも指導しています。1年生には「さん・くん・です・ます」をつけて話すことを習慣づけます。今週1年生の教室で「人を敬うことば」の授業をしました。体を向けて聞くことや「さん・くん・です・ます」をつけて話すことはできていました。新しいことを覚えるのが学ぶことの喜びですから、2つのことを教えました。1つは、お弁当箱を家の人に渡すとき、「おいしいお弁当をありがとうございました。」と言うこと。もう一つは、家の人や先生に「こうするのですよ。」と教えてもらったら、「ご指導ありがとうございました。」と言うこと。次の日に、1年生がさっそく敬うことばを使ったと話してくれました。
私は、「おいしいお弁当をありがとうございました。」と言いました。お母さんは「きれいに食べてくれてありがとう。」と言ってくれました。分からないところを教えてもらったときに、「ご指導ありがとうございました。」と言いました。・・・こうやって対話することが好きで、敬うことばでていねいに話して、ていねいに聞く子どもにしていきます。