vol.2 異変。
2016年2月末、日曜の晴れた朝。
娘が2歳3か月になった冬のこと。
「あれ、何?この動き。わざとやってる!?」
休日の朝、小さな娘をだっこしてリビングのソファーでのんびり過ごしていたときのこと。娘の様子がちょっとおかしい。
ゆさゆさゆさ、と、曲げた左腕だけが前後に動いている。わずか10秒ほどのできごと。本人が動かしている風ではなく、勝手に腕だけが動いているような、妙な違和感。
その時はすぐにおさまったし本人もなんともなさそうなので、あまり気にしないようにしていた。
そんなことがあったのも忘れかけた、一週間ほど経ったある朝のこと。
娘は朝ごはんを食べていて、私はキッチンで何か作業をしていたと思う。
「ガタン!」
大きな音がして驚いて見ると、娘が椅子から落ちて倒れている。慌てて駆けつけると、全身がガクガクと震えていた。
(…痙攣!?)
目に力が入り、焦点が合っていない。抱き上げていいのかも分からず、とにかく落ち着くまで名前を呼び続けるしかなかった。
(何で?椅子から落ちて頭打った!?この低い椅子から!?)
20秒ほどのことだったと思う。呼吸が止まるような激しいものではなく、わざとでもできそうな感じに全身がカクカクと不自然に動いていた。
後になって考えると、これが最初の全身発作。
椅子から落ちたから発作が起きたのではなく、発作が起きたから椅子から落ちたことに気付いたのはずっと後の話…。
それからも、娘の異変は続いた。
1週間後には、朝起きてきてしゃがんだ体勢で止まったまま、パジャマのズボンの裾を掴んだ右手が小さく10秒ほど動いていた。それも本人が意識して動かしている風ではなく勝手に手が動いているような違和感。
腕が揺れる、足がビクビクひきつる、早朝に布団で全身がガクガク・・。それぞれほんの数秒から数十秒、1つずつは本当に小さな動き。でも最初は間隔が1週間あったのが、2、3日になり、徐々に頻度が増していた。
娘にはもう1つ、気になる症状があった。
それは、斜視(=左右の目が別々の方向を向いてしまう症状)。
娘の場合、特に右目だけが中心に寄る斜視があった。それも、ほんの数ヶ月前に目立つようになり、急速に頻度が増し時間も長くなっていた。近所の眼科を受診して大学病院を紹介され、数回通って検査を受けているところだった。
その斜視が、体に異変が現れるとき必ずと言っていいほどきつく出ていた。
小さくガクガクひきつりながら、右目が内に寄っている娘を前に、ただただオロオロするばかりだった。
後で考えたらもっと早く受診するべきだったと思うけれど、その頃の私はとにかく恐くて、なかなか病院に行けずにいた。
何の病気だろうと、現れている症状から携帯でひたすら検索して調べていた私は、ある病気の子の話を見つけて受診を決意する…。
※このコラムは、西広島タイムス紙面に2019年から連載した内容を加筆・修正して掲載しています。
【 コラム作者 】
広島市在住の3児の母。
末娘が2歳のとき「結節性硬化症」という難病と診断される。
子どもの病気や障害と向き合いながら、子育てや仕事に毎日奮闘中。