vol.30 小児病棟に響き渡る子どもたちの悲鳴⁉
◇2017年 10月
3歳の娘の手術のため、広島大学病院に入院中のある日。
お昼前、突然遠くから聞こえてくる子どもたちの悲鳴や泣き叫ぶ声。廊下に出てみると、逃げ惑う子どもの姿!
悲鳴はどんどん娘の病室に近づいてきて…
大学病院の小児病棟では、入院している子どもたちが少しでも楽しく過ごせるよう色んな工夫がされている。小さい子ども向けの絵本の読み聞かせ会や、中学生向け(小学生以下は入場不可!)の映画上映会もあったし、クリスマスなどイベントに合わせたお楽しみ会もある。
10月といえば、ハロウィン!
ナースステーションや廊下は、手作りのかわいいおばけたちですっかり飾り付けられていた。そんな中、10月31日のハロウィン当日…。
お昼前、そろそろお昼ご飯が来る頃かなぁと思いながら病室にいると、遠くから子どもたちの悲鳴や泣き叫ぶ声が聞こえる。廊下をのぞくと、遠くの方に見えたのはかなりリアルな洋風のおばけの姿。逃げ惑う子どもたち。悲鳴はだんだん近づいて来て…娘の前に現れたのは3体の洋風のおばけ!しかも小さい子が泣くのも納得のクオリティ!
娘の反応は!?と見ると…
「こんちら~(こんにちは)」
と、普通の人間に対するのと全く変わらない様子で、お化けが差し出すお菓子に手を伸ばして受け取っている。笑
―(娘の目にはこのおばけがどう映ってるんだろう…)
娘は、小さいときから全く人見知りもなく、おばけも鬼も犬もへっちゃら。保育園の節分の豆まきでも、かなりリアルな鬼に泣き叫ぶお友だちをよそに、娘は鬼の足元に散らばった豆(の代わりに茶色い紙をまるめたもの)をのんきに拾い集めて遊んでいた。
娘が怖がらないのは、おそらく顔を識別するのが難しいことと、そんな怖いものが世界にいると思ってもいないこと。怖い人がいることも知る必要があるけれど、今は自分の世界を信用できることは素敵なこと。今後おばけを怖がる日が来るのか来ないのか…。
大学病院の小児科病棟は、長期で入院している子も多い。毎日同じことの繰り返しになりがちな入院生活の中で、子どもたちを少しでも楽しませようという病院スタッフさんの心意気に感激したハロウィンだった。
※このコラムは、西広島タイムス紙面に2019年から連載した内容を加筆・修正して掲載しています。
【 コラム作者 】
広島市在住の3児の母。
末娘が2歳のとき「結節性硬化症」という難病と診断される。
子どもの病気や障害と向き合いながら、子育てや仕事に毎日奮闘中。