「損か、得か」
先日、スポーツ品店で山登りの道具を購入するためレジに行きました。レジ担当の人から店のカードを作ると商品が5%安くなりますよと言われ、そんなに安くなるものなのかと驚いていたら、「ずいぶんお得ですよ」と重ねて進められました。その日、薬局に行くとポイントカードはお持ちですか?と尋ねられました。ポイントカードというのは大抵の店にあるのか、頼んでもないのにポイントカードを作って渡してくれる店まであります。テレビをつけると、いい宿の紹介番組をやっていて、期間中は1泊○○円になり、通常よりも4000円もお得とタレントさんが話していました。
消費を促すための方法なのでしょうが、やり過ぎではないかと思うものもあります。そして、何より私たちがこのお得情報につかりきってしまうと、行動基準のすべてが、○○があるから○○しようとなってしまうのではないかと心配します。
○○があるから○○するというのを子どもの生活で置き換えると、ご褒美をもらえるから算数テストの勉強をするということです。このようなやり方を行動基準にしていることは決して悪いことではありません。
小学校の3年生くらいまでは、このやり方は有効です。たとえば、しつけ教育は○○があるから○○すると教えます。
- 先生が言うからおはようございますとあいさつをする。
- 家族の約束で決まっているから9時までに布団に入る。
損か、得かで言うと、
- ◎がもらえるからていねいな字を書く。(先生に怒られるからていねいな字を書く)
- シールを貼ってもらえるから自主勉強をする。
もちろん、ポイントカードの損得勘定とちがって、先生やお父さん、お母さんに喜んでもらえるからやるという、心の通ったものです。こういう○○があるから○○するやり方をうまく使って行動基準にして子どもは必要なことを身に付けていきます。
掃除時間に6年生が1年生の教室前の廊下を雑巾で拭いていました。絵の具か何かこびりついていたのでしょうか、何度も何度も拭いていました。特別な行動ではなく、掃除時間は当たり前に見られることではありますが、これこそ人間の理想とする姿だと思います。そこには、先生が怒るから床を拭くという考えはありません。損か、得かを行動判断の基準に置けば床を拭いても得はない、しんどいだけで損だとなりますが、この6年生は汚れを取りたいから取るだけのことです。
あいさつリレーという子どもの企画がありました。6年生から順番に担当の日が決まっており、事務室前で登校する子どもにあいさつをしていきます。あいさつに立つ6年生を見るとあいさつをしたいからするという考えでやっているように見えました。4年生のころから、○○があるから○○するではなく、○○したいから○○するという道徳性を、しつけから道徳へと高めていきたいと考えます。