「感謝という学びの場」
学校行事の前に普段できないところを掃除していると、それを見かけた2年生が、「きれいにしていただいてありがとうございます。」と言ってきました。また、休み時間に1年生の教室の前を通ると、「2組の先生にご指導ありがとうございましたと言えました。」と誇らしげに教えてくれました。感謝のことばが子どもたちに少しずつ浸透し、身についていることをうれしく思います。
6年生が掃除をしているとき、「1年生の机やいすはとても小さくて、わたしもこんな頃があったのかなあ。6年生に掃除をしてもらっていたんだなあ。掃除をがんばって1年生にきれいな場所で落ち着いて勉強できる環境を作りたい。」と話してくれました。6年生は敬意と人のために尽くすリーダーシップが備わっています。
教育実習に来た卒業生のAさん。私のところにやってきて、いちばん先に話したのが感謝のことばでした。
「小学校1年生の時、わたしは計算がすらすらできなかったので、先生に休み時間に教えてもらいました。ありがとうございました。」
少し恥ずかしそうに、そして、特別に私のためにやってもらったことが有り難いと言っていました。今後は、教師になって様々な環境の中で育てられている子どものために力を尽くしたいと教えてくれました。
小学生のときは、目立つ子ではなく、人が見ていないところでもこつこつ努力する子どもでした。休み時間の計算の学習も苦にせず、できるようになるまで私のところに来ていました。掃除は人が気付かないような場所をやり、日直の務めも黙々とやっていました。表だってやるタイプではないので、周りから特別ほめられることはなく、感謝されるわけでもなかったのですが、本人は、やりたいからやるといったふうだったのを覚えています。
大人になったAさんを見て、敬意をもって感謝する人というのは、主体性をもって社会に貢献している人ではないかと思いました。
学校というところは、国語や算数の学力をつけるだけではありません。広い意味の教育をするところです。社会の中で生きていくための学びの場です。
朝、教室に入ったら、人とあいさつを交わすこと、学習するものを机の中に収めて準備をしておくことを学びます。順番に日直を務めることや行事があれば何らかの役割を務めることを学びます。仲間といっしょに食事をすることや掃除をして明日に備えること、学校生活すべてが社会に出て必要なことの予行をしているのです。この学びを通して感謝する心も育てます。
また、文化祭などの学校行事は、学習の発表の場であるとともに、普段はできない楽しい活動ができます。楽しいことの裏には汗を流す人がいます。汗を流す人の存在を知り、感謝することの学びの場と考えています。