「どうすれば芽が出るのか」
運動会で子どもが走る姿を見ていて感心しました。順位を決めるので1番になる子もいれば最後になる子もいます。最後になっても前を向き力の限り走る姿はすがすがしいものです。ただ、持てる力を出し切れなかった子どももいました。転んでしまったり、バトンを落としてしまったり、ミスをしてしまうことはあります。最善を尽くす気持ちで向かった子どもですから悔しい思いをしたはずです。そんな子どもの姿を見ていて、ふと担任をしていた時のことを思い出しました。
運動会ではなく、理科の授業で季節による植物の成長の変化を理解する学習の時のことです。
5月にヘチマの種をまき、ほとんどの子は芽が出たのにまだ出ない子どもがいました。毎日水やりを欠かさずしているのですがなかなか出てきません。
一生懸命のAさんは私にこう言ってきました。「先生、私のヘチマは芽が出ません。」いかにも不満そうです。自分はきちんと世話をしているのに芽が出ないのでおかしいと何かのせいにする様子でした。それから数日たって芽が出て大喜びしたのですが、その時よく聞いてみると家庭で、「どうして芽が出ないのか、世話をしているのか」と責められていたようでした。この子は、努力すれば成功すると言われ、期待をかけられて育っている子でした。
もうひとり、芽が出ないBくんがいました。Bくんは、毎日芽が出ない鉢を見ていました。「どうして芽が出ないんだろう」「どうすれば芽が出るんだろう」と考える子でした。Bくんは普段から、できないことがあれば試行錯誤して行動する子でした。努力してできなければ、方法を変えてやってみる子でした。思い通りにならなくても苦にせず、希望を持っていました。
子どもに期待をかけると期待外れに終わり、「なぜ、あなたはできないのか」と責めてしまいます。また、失敗をさせたくない心が働き、先回りして失敗させないこともあります。努力すればそれで良いと努力を目標にしています。Bくんのように希望を持って向かっていくには、家庭や学校が子どもに希望を持って接することが必要です。
授業をしていて、「どうしてこんな簡単なことができないのか」と子どもに腹を立てるのではなく、「子どもたちにとって、この学習は難しいことなんだ」と理解し、「どうやれば理解できるのか」に考えを向けることです。
運動会でミスをして力が出せなかった子どもには、教師が希望を持って語りかけ、子ども自身が希望を持って何をどうしたらよいか判断し、行動するようにしたいと思います。たとえ、正解が出せなくても心に留めておくことが肝心です。ずっと思い続ければいつか芽が出ることもあります。希望を持つとはそういうことだと思います。