不安を持つ子どもの見立てと対応
子どもの乱暴な言動が見られることがあります。たいていの場合、その場で何があったのか話をさせると、自分の乱暴な態度やことばで相手を傷つけたことに気づきます。自分がしたことに自分で気づけば、学びとして成り立ちます。こうやって子どもは成長していきます。ただし、乱暴な態度が続くのであれば、われわれの見立てと対応が必要です。
子どものストレスについて話を聞く機会がありました。ストレスの状態は、そのもとになるストレッサーと受け取り方が関係するそうです。誰にでもストレッサーはあり、ストレス状態はその受け取り方が左右します。わたしたち大人でも、疲れると受け取り方が悪くなります。元気であればストレス状態になりません。身体が弱っていれば、ストレッサーを重く受け止めるので、不健康な心と体になります。食事と排泄と睡眠が子どもにとって大事と言われるのは、このことです。そもそも、悩みを抱えるのは正常なことです。人は、悩みを抱えつつも前を向いて進んでいきます。悩みはあって当たり前ですが、それが重荷になって続くとき、人は怒りや不安を持つようになります。乱暴な言動は、怒りや不安を外向きに出しているのです。
子どもが小さな家出をすることはありませんか?
わたしは子どものとき、自分の思いが親に分かってもらえなくて、ちょっとそこまで家出をしていました。今思えばかくれんぼのようなもので、どこにいるのか見当のつく姉が迎えに来てくれました。そんなことを繰り返すうちに、自分のことばで親に訴えるようになったので、かくれんぼの家出はしなくなりました。
「ラモーナとお母さん」(クリアリー作)という本があります。主人公のラモーナは、子ども扱いする親に腹を立て家出を考えます。家出しようとスーツケースに荷物を詰めているところを母親が見つけます。ここで母親は家出の手伝いをします。スーツケースを重くして運べなくするという絶妙の方法で家出を止めます。そのあと、ラモーナは母親に学校や家のことでの怒りや不安を話し、もとの明るいラモーナに戻ります。自分のことばで語ることで、心が健康になるのです。
怒りや不安が重なると、発熱や下痢のような身体症状が出たり、気分が落ち込んだりすることがあります。ずいぶん前のことですが担任をしていたころ、ある日突然、学校に来られなくなった子どもがいました。朝、迎えに行っていっしょに登校していたのですが、それもできなくなり、そのうち、発熱やひざの痛みを訴えるようになりました。休みが数カ月続いたある日、子どもに、「先生にしてほしいことは何?」と子どもに聞くと、「4歳のときに戻りたい。」と言いました。このことばで、学校に来るようになりました。自分のことばで本音を語ることができれば、わたしたち大人は見立てと対応ができます。自分のことばで語ることができれば、子どもは健康になる力を出すのです。