vol.8 希望の光
結節性硬化症の診断を受けると同時に、てんかん発作をおさえる薬を飲み始めた娘。
毎朝晩、粉薬を少量の水に溶かしてやわらかめのお団子にしたものを、むりやり口に突っ込んで飲ませていた。
娘は抗てんかん薬を飲み始めて2週間ほどで、毎朝あった発作がほぼ出なくなっていた!
結節性硬化症の子のてんかん発作は、薬ではコントロールできない難治性の場合が多いと聞いていた。しかも薬はだんだん量を増やして調整するので、この頃はまだごく少量。
短期間での薬の効果に、担当医師も、
「この量で発作がほぼ治まるなんて、良い傾向ですね。もう少し量を増やしたら単剤でコントロールできるかもしれませんね!」
と、驚いていた。
子どもの脳は、認知機能が急速に発達するはずの時期。小さいときにてんかんを発症し発作をコントロールできないと、発達を邪魔してしまうので知的な遅れが出る場合が多い。
(こんなに早くコントロールできたら、もしかして遅れが出ずにすむかも…!)
私は希望の光が見えた気がして、期待せずにはいられなかった。
てんかんと抗てんかん薬
’てんかん’というと発作を起こして突然倒れたり自動車事故を起こしたりするイメージがあるかもしれませんが、てんかん患者は全国に100万人いるとされ、現れる発作タイプは様々です。
てんかんを発症すると、’抗てんかん薬’といわれる発作を抑える薬を服用します。10種類以上ある薬を、発作タイプに合わせて調整しながら服用し、それでも抑制(コントロール)できない場合は外科的治療(=手術)を検討します。70-80%人は抗てんかん薬と外科治療で発作を抑制することができ、残りの20-30%の人が難治性てんかんとなります。
こうしてこの年の春は、娘の異変からの難病診断、たくさんの検査や、てんかん発作の薬の調整と経過観察のための大学病院通いで大忙しだった。
しかも4つ上のお姉ちゃんはピカピカの小学1年生。
難病診断直後に参加した入学式では、入場してくる子どもたちを見ながら、末っ娘もこうやってランドセルを背負って小学校に行けるようになるんだろうかと、ぼんやり考えていた。
入学したばかりの1年生は下校時間が早く、授業参観や家庭訪問もある。週末はお兄ちゃんの習い事も。そんな中での通院が続いた。
検査が一通り無事終わって保育園の通園も慣れ、薬が効いて発作も落ち着き、小学校は給食が始まって、ようやく少し落ち着いたのは5月のはじめだった。
※このコラムは、西広島タイムス紙面に2019年から連載した内容を加筆・修正して掲載しています。
【 コラム作者 】
広島市在住の3児の母。
末娘が2歳のとき「結節性硬化症」という難病と診断される。
子どもの病気や障害と向き合いながら、子育てや仕事に毎日奮闘中。