vol.3 受診する決心。
◇2016年3月25日深夜
増える発作と、進行する斜視。小さな娘の体に何が起こっているのか心配でたまらなくなっていた私は、夜中に布団の中で斜視と発作について携帯で調べていた。
体の一部が勝手に動くのは、てんかんの発作かもしれないこと。
てんかん発作は脳波の異常で起こること。
斜視の原因を探るのに、脳のMRI検査をすることもあること。
「斜視」「発作」「脳」…色々検索していたら、あるブログを見つけてしまった。
見つけたのは、小学生の男の子のお母さんのブログだった。
男の子に突然斜視が出て、どんどん進行していって、頭痛を訴えるようになる。
脳のMRI検査の結果、原因は「脳腫瘍」。しかも腫瘍ができたのは、視神経に影響している脳幹。脳幹は脳の中心部にあり、手術が出来ない。
病気が発見されたときには男の子は手の施しようがない状況で、発見時、すでに余命半年…!
(…余命半年!!)
私は息を呑んだ。
(そういえば娘も発作のとき斜視がきつく出ていた。まさか娘も脳腫瘍…!?)
ブログには、男の子が天国に旅立つまでを丁寧に綴られていた。
私はブログを一気に読んでから、その夜はもう恐くて涙が止まらなくて。
(明日相談に行こう。)
そう決意して、横で眠る小さな娘を見ながら、眠れずに朝を待った。
翌朝午前5時40分。
布団の中で、3日連続になる朝の発作。熱性痙攣のような体の硬直はなく、全身の力は抜けた状態で、わざとでもできそうな感じに手足がぐらぐら動く。30秒ほど。
(やっぱりまた今日も…)
もう娘の異変を認めざるを得なかった。
この日は土曜日。いつものように朝ごはんの支度をして、小学生のお兄ちゃんを習いごとに送り出すと、「さて」、と私は意を決して兄に電話を掛けた。偶然にも私の兄は脳外科医師で、2年前からたまたま広島市内の脳外科病院に赴任していた。
「末っ娘のMRIを撮ってもらいたいんだけど」
兄には発作の話はしていなかったので、ぶしつけな話に最初は驚いていた。
でも、最近の斜視と発作が続いている状況を説明すると、顔色が変わったのが分かった。(電話だから顔は見えないけど 笑)
土曜日だったにもかかわらず、MRIは難しいけどCTなら、とすぐに撮ってもらえることになった。
「相当な異常がないとCTには映らないけどね…」と言いながら。
娘を連れて病院に着くと、早速兄から問診を受ける。私は娘の斜視の状態と、最近の発作の頻度や様子を細かく伝えた。
そして、脳のCT撮影。
CTはほんの数秒で撮れるので薬を使って眠らせる必要もなく、頭が動かないよう二人で押さえながら、一瞬で撮影終了。
撮影が終わり、娘をだっこしながら廊下の長椅子で待つ。
間もなく名前を呼ばれ、私はどんな結果が待っているのかと緊張しながら診察室に入った。
目の前に映し出された脳のCT画像。そこには、シロウトにもはっきりと分かる、たくさんの白い部分。確実に「何か」があった…
CTにも映る「相当」な異常…!?
※このコラムは、西広島タイムス紙面に2019年から連載した内容を加筆・修正して掲載しています。
【 コラム作者 】
広島市在住の3児の母。
末娘が2歳のとき「結節性硬化症」という難病と診断される。
子どもの病気や障害と向き合いながら、子育てや仕事に毎日奮闘中。