廿日市市の「おおの自然を愛する会」で事務局長を務める文理一男(75)さんが、冊子「廿日市市とその近郊で見られる 石と鉱物」を制作しました。山、鉱山、河川敷の石や水晶などを種類や特徴とともに多数掲載。「地域住人や子どもたちが読んで、地元の地質やその歴史に興味を持ってもらえたら」と話します。
冊子はB5サイズ、86ページ。大野地域の経小屋山、権現山、高見山などで見られる花崗岩の露頭やアプライト脈、同じ市内でありながら地質の形成が異なる吉和地域の石の特徴などを紹介。長い年月をかけ多種多様な形になった自然の産物を知ると同時に、廿日市市の土地の成り立ちを垣間見ることができます。
著者の文理さんは、幼いころ山や河川敷でキラキラと輝く珍しい色の石や水晶に目を奪われ、持ち帰っては学習机の引き出しにしまい、時折眺めていたそう。成長するにつれて遊びや勉強に興味が移りましたが、40歳を過ぎたころ山登りで訪れた岩殿山(山梨県)の地質に惹かれ、少年時代の好奇心が再熱。石や鉱物だけでなく地形や地質など、広義的に地学に目を向け始めたそうです。
定年退職後、関東地方から廿日市市大野に帰郷。時間があれば、宝探しをする冒険者のように周辺の山々を登り、気に入った石や水晶を調べて記録に残していました。鉱物と化石の専門雑誌「ミネラ」(エスプレス・メディア出版)へ寄稿するようになると、「自分の名前や記事が載るとうれしかった。そのための山歩きになっていった」と振り返ります。
忙しい日々が落ち着いたというコロナ禍、「いつかは」と胸に抱いていた冊子作りの時間が生まれ、2022年ごろから本格的に着手。石好きの仲間の手を借りながら、記録をまとめていきました。
同じような石でも、大学機関の分析にかけると全く違う性質のものだったことも。図鑑や標本を調べるだけでは性質を断定できない難しさに手こずったそうですが、「石はいろいろな顔をしていることが魅力」と目を細めます。
「山登りの集大成」との強い思いで仕上げた冊子は、仲間や関係者からたくさんの助けを得て2024年2月、完成しました。100冊の部数のうち約半数を、地域の人が閲覧できる廿日市市内の図書館や各市民センターなどに置いています。
「冊子も作ったし年齢も年齢だから、山登りはほどほどにするかな」と笑顔を見せる文理さん。今後は合併される前の大野町時代の郷土史をまとめていきたいと考えているそう。郷土への尽きない愛と探究心が、新たな“集大成“へとつながっていきます。
※冊子「廿日市市とその近郊で見られる 石と鉱物」の問合は、文理さん(090-6147-6907)まで。
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