vol.26 どっちの手術か私が決めるの!?
◇2017年夏
3泊4日の入院検査の結果は、だいたい予想されていた通りだった。
入院検査で出たデータをもとに、広島大学病院内外のたくさんの先生が検討してくださった結果、てんかん発作を起こしている部分を特定して取り除くことは難しいとの判断だった。
娘の脳には発作を引き起こす原因となる「結節」が無数にある。結節が多すぎて原因になっている部分の特定が難しく、また結節を全部取り除くわけにもいかない。どれかを仮に取り除いたとして、他の結節がまた発作を引き起こす可能性が高く、意味がなくなってしまう。
原因の箇所を取り除くことが難しいとなると、手術の選択肢は2つ。根本的な治療ではなく、発作が軽くなったり回数が減ったり、緩和を目的とした手術。
- 選択肢① VNS(迷走神経刺激術)
首を走る’迷走神経’にリードを巻き付けて、脇のあたりに電流を流す装置を埋め込む手術。定期的(5分に1度程度)に迷走神経に電流を流すことで発作の軽減が期待される。
症例も多く手術のリスクは低いが、手術を受けた約50%の人に50%程度の抑制効果があるという微妙な数字。
- 選択肢② 脳梁離断
右脳と左脳をつなぐ’脳梁’を離断する開頭手術。ばたっと倒れるような全身発作に効果的。頭蓋骨を開けての開頭手術になるのでそれなりにリスクはあるが、開頭手術としては難しい手術ではないらしい。
―(3歳の小さな娘が手術を受けるのに、効果が出るか微妙なんて…。脳の手術なんて怖すぎる!)
私は、全身麻酔で眠らされて手術台に横たわる娘を想像しては涙が止まらなくなった。しかも、担当医から丁寧に説明はあったものの、どちらの手術を受けるか選択するのは私(!)。
ー(そんなのシロウトに決められるわけないやん!)
小児科の担当医師と、執刀する脳外科医師からそれぞれの説明は受けたものの、どちらの手術を受けるべきか、なんて決められるはずもなかった。
どうしたらいいか分からず、私は実兄の同僚であった脳外科の専門医を頼った。
相談すると、東京にいた先生は親身になって聞いてくださり、検査結果のデータなども送って検討してくださった。
「お母さんが開頭手術が怖いと思うなら、VNSを受けてみたら良いと思います。脳の手術の方が侵襲性(心や体へのダメージ)が高い。どちらにしてもいずれ両方受ける必要になる可能性は高いし、どちらを先に受けてもそんなに後悔することにはならないと思いますよ。
とにかく発達のためにも、今はできることを全部試すべきと思います!」
と、力強いアドバイスをもらった。
私は集められるだけ情報を集め、聞けるだけアドバイスを聞いて、1週間ほど迷いに迷ってからVNS(迷走神経刺激術)の手術を受ける決心をした。
※このコラムは、西広島タイムス紙面に2019年から連載した内容を加筆・修正して掲載しています。
【 コラム作者 】
広島市在住の3児の母。
末娘が2歳のとき「結節性硬化症」という難病と診断される。
子どもの病気や障害と向き合いながら、子育てや仕事に毎日奮闘中。