西広島沿線散歩の2回目は、廿日市市地御前。対岸の嚴島神社とは深い縁があり、飛鳥時代に佐伯鞍職によって地御前神社が創建されたと言い伝えられています。本宮の嚴島神社の御前にあるので「地の御前社(じのごぜんしゃ)」と呼ばれ、「地御前」という地名の由来といわれています。現在も由緒ある史跡が点在し、瀬戸内海を望む風光明媚な地御前を紹介します。
地御前神社
創建は嚴島神社と同じ593年と伝えられています。旧暦5月5日の端午の節句には、御陵衣祭(馬とばし)が催されます。舞楽、馬に乗って弓で的を射る「流鏑馬」の神事が執り行われます。最大の神事が、旧暦の6月17日にある嚴島神社の「管絃祭」。御座船が立ち寄り、辺りには露店が立ち並びにぎやかになります。
カキ
地御前を語る上で欠かせないのが、冬の味覚「カキ」。ひときわ粒が大きく味も良く、「じごぜんかき®」のブランドとして全国に知られています。地御前漁業協同組合の峠清隆代表理事組合長は「これがきっかけで有名になった」と話すのが、1977(昭和52)年度の農業祭。当時、漁協では良質なカキの育成に向け、山口県の水産大学校と協力し、潮の流れや水質検査などしていかだの配置や数を研究。業者の努力も実り、農業祭水産部門で天皇杯を受賞し全国にその名が広がり、2002年には水産庁長官賞も取り、ブランドとして確立しました。多いときには37業者いましたが、現在、20業者。後継者問題や共同作業所が老朽化で使えなくなったこともあり減少したそうです。峠組合長は「最近は海が弱っている。だが、苦労しながらも良い牡蠣を作っていきたい」と力を込めます。
読書館ロイドの風船
昨年6月、住宅街にオープンしたカフェを備えた「私設図書館」。2階の書庫には、店主の本田典子さんや家族所有のマンガや小説、童話、絵本など約6000冊の本が並びます。名作文学全集や映画のパンフレット、美術本などジャンルはさまざま。1階は、ロッキングチェアにペレットストーブなどアンティーク調の家具が並びレトロな雰囲気で大人の隠れ家のよう。厳選した豆を使用したスペシャルティーコーヒーを傾けながら昔の本を読み懐かしんだり。本田さんは「読書にこだわらなくても、ご自身の楽しみ方で特別な時間を過ごしていただきたいですね」と話しています。利用料は2時間ワンドリンク付きで大人1600円。予約制。問合=☎ 050-5848-2245
JA産直ふれあい市場「よりん菜」
「地元の農家の応援ショップ」として昨年4月にオープンした産直市。地元廿日市市・大竹市産の野菜を中心に県内の特産品などが並びます。「その日に取れた新鮮な野菜が並ぶのが売りです」と同店の河井真一さん。今からの季節はナスにトマト、ピーマン、キュウリが旬を迎えます。店舗の一角に備えた専用キッチンで、店内の新鮮野菜で作った弁当や総菜を販売。コロナ禍の飲食店を応援しようと、地元店舗の弁当の販売にも力を入れています。
西向寺の天蓋松・天井松
頭上を覆うように東西南北に広がる枝振り。樹齢二百八十〜三百四十年といわれいるアカマツ。上から見ると緑の天幕が広がっています。名前のごとく辺りを蓋をして、冬には雪が降っても地面に積もることがないそうです。
小林千古
地御前を代表する偉人の1人が、画家・小林千古(本名小林花吉・1870-1911)。地御前村(当時)に生まれ、アメリカやヨーロッパに渡り絵画を学びました。帰国後は上京し白馬会創立10周年記念絵画展に出品して日本画壇にデビュー。海外で制作した絵や日本的装飾画などが絶賛されました。結核を患い41歳の若さで亡くなりました。生誕の地に石碑を建て、海外で羽ばたいた先人の偉業をたたえています。
地御前キラキラ公園
2011(平成23)年にオープンした公園です。中央に多目的広場があり、複合遊具や健康遊具、さらに公園を囲むように外周500mのウォーキングロードも。高台にあり瀬戸内海を臨むことができます。一方では、貯水槽や備蓄倉庫など備え防災公園としての役割も担っています。
鹿の子地蔵
「鹿の子」とは古い地名。江戸時代の文書には、本尊は水子地蔵で、堂内には本尊とは別に20数体の木像があると書かれているそうです。木像は子どもを亡くした母親や水子をいとしんだ女性が奉納したと推測しています。地元自治会と市民センター企画運運営員会が銘板を設置。ひっそりとたたずむ地蔵のいわれをを後世に伝えています。
大イチョウ
廿日市市立地御前小学校の敷地内に立ちます。1985(昭和60)年に廿日市市の天然記念物に指定されました。樹高は15m以上あり、現在、緑が茂り鮮やか。児童の成長を見守るようにたたずんでいます。